平成29年度 理数講演会(後期)
日時 平成29年12月13日(水) 6・7時間目
場所 視聴覚教室
対象 理数系:2学年1・2組(82名)
講師 岡山大学大学院教育学研究科 中川征樹 准教授
題目 「牛一頭分の皮で覆える土地の大きさは? -ディドー(Dido)の問題-」
ディドーの問題には、歴史的な背景があります。 紀元前6世紀頃に地中海貿易で栄えた古代都市国家「カルタゴ(Carthago、 Carthage)」(現在のチュニジア共和国の首都チュニス近郊にありました)は、 紀元前814年にフェニキア人(Phoenicia、 Poeni)によって建国されたと言われています。 その建国にあたっては、 次のような伝説が残されています。
地中海東岸の都市国家ティルス(テュロス)(現在はレバノンの都市スール)の国王の娘であったエリッサは、 国王の弟である叔父のシュカイオスと結婚し、 巫女として神に仕えていました。 その後、 国王である父が死去し、エリッサとその兄ピュグマリオンは、 父の遺言に従って、 共同で国を治めることになりました。 ところが、 兄ピュグマリオンは、 王位を独占しようと企み、 エリッサの夫であるシュカイオスを殺害し、エリッサの命をも狙いました。 そこで、 エリッサは家臣を従えて、 海へと逃がれました。 長い航海の旅を続けるうちに、 エリッサは「ディドー(Dido) (迷える人)」と呼ばれるようになりました。 長旅の末、 ディドーとその家臣の一行は北アフリカ沿岸の岬に辿り着きました。 ディドーは、 その土地が気に入り、 そこに国を作ろうと考え、 その土地一体の支配者であるイアルバース(ヤルバス、 ジャーバス)に、 土地を分けてもらうよう申し入れました。 ところが、イアルバースは、 この申し入れに難色を示し、
「牛一頭分の皮で覆えるだけの土地であれば分け与えてもよい」
と言いました。 「牛一頭分の皮で覆える土地・・・」。 そんなところに国を作ることなどできようか? ディドーは途方に暮れます。 と、 そのとき、 家臣の一人(きっと、 その人は数学が得意だったのでしょう)が妙案を思い着きます。 新しくできあがった町はフェニキア語で「カルト・ハダシュト(Kart Hadasht、 新しい町)と呼ばれ、 これが後にラテン語で「カルタゴ(Carthago)」と呼ばれるようになりました。
このような歴史的背景を導入に、ディドーの問題について、講義をいただきました。先生の講義のみならず、演習問題も用意していただき、生徒は四苦八苦しながら相互に教え合う姿もみられました。
<生徒感想>
・「長さが決まったひもで、どのように囲めば面積が一番大きくなるか。」という一瞬簡単そうと思わせる問題だったけど、それを証明するのはとても難しく、逆に、頭を柔らかくすれば、中学生・小学生でも簡単に証明できることが分かり、数学の奥深さに感激しました。
・一つひとつは今まで習ってきた内容で、それを上手く使うことで、色んなことを数学で証明できるのはとても役に立つと思いました。
・難しい問題を出されて解けないと思っていたが、解説を聞いてみると、意外と知っていることの応用だったのでびっくりした。