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野球部 秋季大会の難しさ

2021年09月6日

本校にとって秋季大会は本当に厳しい。全ての試合に全精力を傾け、少ない人数と選手の伸びしろで戦うチーム作りのために、夏に頑張った後のチーム作りは誠にせわしない。なにしろ、Aチームの指導の片手間に新チームの構想を固めるほどの選手もスタッフもいない。「伸びしろ県下一」と言われるのは入学時にそんなに完成した選手はいないということで、甲子園で投げたり打ったりしてる1年生って私の基準からするとあり得ない存在だ。実際、私が赴任してから秋の県大会に出られたのは2回だけで、いずれも初戦敗退だった。でも、愚痴と言い訳もここまでにして報告を。

初戦の笠岡工業高校戦では常に先手を取られた、打撃をはぐらかされた印象がある。追いついては引き離されの繰り返しだったが、7回裏に2点を入れて3対7の4点差リードにしたときには流石に流れをつかんだと思った。しかし、その裏に150球を投げたエース森君を崩されて同点に追いつかれ、10回表の1点が決勝点となって負けた。グラウンドでの挨拶が終わると監督の姿がいつのまにか消えていた。部長は片付けやらスコアあわせやら本部での返却物などやることが多少あるのだ。最後にバスに戻り、「遅くなってすいません」と監督に声を掛けたが「すいません」の一言のみで、バスの中は押し殺したような沈黙が、学校到着の1時間20分の間を支配していた。どんなミーティングになるのか想像できんなーと思いながら、何が悪かったのか数えながらバスに揺られた。

バスから降りて、監督の第一声は私には意外なものだった。「思っていたよりずっと力が出せたな。」

「森は期待以上の投球をしてくれたし、1年生で初リリーフの林も自責点は無い。打撃でも片岡や荒木、中田も打てたじゃないか。舟橋もあの送球を良く取ったな。カバーできてなかったら大ピンチだった。」確かに、打撃では狩屋君もうまくなっていたし、4番の河田君も安定していた。中田君は守備でも頑張れていた。チーム全体では情けない致命的なエラーもあったが、普段から想像できないものではないのだが、でも・・・?。監督は続ける。「ミスはあったし、直さなきゃいけない。でもそれで負けたわけでは無い。ミスと言えば俺自身が緩みを作った場面もあったかもしれん。それはすまん。でも、今回の敗因は、結果的にうまくいった中にこそあるのではないか。サインミスをしたけど点が取れたとか、送球がそれたけどアウトになったとか、結果的にヒットになったとか、結果が良かってもチャラになるわけじゃないんよ。ミス自体を無くさんと、そのときどきの個人の努力だけでは競ったときにだめなんよ。どうすれば良いかを考えないと。」これ以上は企業秘密なのでばらせないが、監督はいくつかのアドバイスの後、次の練習日とそのメニューを選手たちに任せた。選手たちは意外な、そして監督の狙い通りの提案をしてきたのだった。

次の相手は水島工業高校戦である。先発は横山君だが、先制をされる嫌な展開。石井君が3回からリリーフをするが、安定しないが粘り強い投球で点を防ぐ。4点を先制されるが、1点を取る堅実な攻撃を選択する監督。冷静だ。一番ベンチが緊張したのは5回に5点を取ってから。監督の声に厳しいトーンが多く混じり出す。6回では私の左(監督)の方が右(選手たち)より激しいのではないかと思うほどの叱咤激励指示声援。そう、6回は笠岡工業高校戦と同じ状況の4点リードで迎えた回だったのだ。その状況もコールドにも右から気付いていた様子は感じられなかった。当然、よく勝ったとのお褒めの言葉はなかった。次の相手は倉敷商業高校さん。間違わないと勝てない相手だが、着実にできることを全てやって、確率を1%でも高めるのがうちの野球。一か八かの運頼みはない。当日に力を出し切れるかどうかの自分たちのチームが相手の勝負なのだ。